何をもって「許さない」「できない」といえるのか。「できるかもしれない」と批判された場合には、随意契約に対する批判が厳しい中、説明責任を果たすことに相当の重荷を感じてしまっていて、各発注機関は極めて保守的な姿勢になっているようである。

緊急随意契約についていえば、予算決算及び会計令第74条は入札の公告について「その期間を5日までに短縮することができる」と定めているが、これが「5日も待てない」案件のみに緊急随意契約が妥当するという解釈を導き、実際、より厳格に、人命救助のような1日も待てない特殊な場面のみに限定して考える発注機関は多い。

地方自治体においても地方自治法及びその施行令上随意契約について同様の規定が存在するが、財務大臣との協議といったハードルは存在しないが、説明責任の重荷については同様の状況といえる。こちらについては住民監査請求、住民訴訟のリスクもあり、国以上に保守的な地方自治体も少なくないようだ。

しかし、発注機関が随意契約に躊躇しない場面もある。それはこれまでの記述の流れからいえば、それは手続上のハードルが低く、かつ説明責任を果たすことが容易な場面である。その典型例が、いわゆる少額随意契約である。

予算決算及び会計令第99条は「会計法第29条の3第5項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする」とし、例えば、その2号で「予定価格が400万円を超えない工事又は製造をさせるとき」とある。この額以下ならば随意契約ができ、その説明責任は「その額の小ささ」で尽くされているのである。地方自治法、地方自治法施行令にも同種の規定がある。この場合、発注機関は随意契約を利用したことの妥当性を問われることはない。だから発注機関はこの随意契約には躊躇しない。

しかし、説明責任が軽い分、少額随意契約にはリスクが潜む。手続きや説明の軽さから、本来競争入札をしなければならない金額の発注を意図的に分割し、少額随意契約の枠にはめ込もうとする動機が働き易く、説明責任を回避できるという安心感から受発注者間の不正・癒着の温床になり易い、ということだ。