当初は巨額の財政赤字と貿易赤字 を生んだが、1990年代の米国経済繁栄の基礎になったとも評価されている。「軍事支出の増大による強いアメリカの復活」、「減税による労働意欲の向上」、「規制緩和」などの政策を次々と実行した。
一方、あまり効率が良くない造船業への補助金制度を撤廃するなどして軍事費を増強し、旧ソ連崩壊を実現した。米国は、旧ソ連崩壊後、世界に製造業の役割分担をさせて米国中心のサプライチェーン構築を目指し、自身は効率の良いサービス業に特化していった。その結果、米国は「産業空洞化」を招いてしまった。
この産業空洞化は、造船業のみならず、防衛産業全体の衰退にも繋がった。冷戦終結後、軍需産業の規模が縮小し、長期的な戦争を維持する能力が低下した。ウクライナ戦争では、米国のミサイルや弾薬の不足が顕著になり、防衛産業の脆弱性が露呈した。
また、米国の防衛産業は、レアアースや半導体などの重要な資源を中国に依存しており、供給の不安定さが問題となっている。特に、軍需品の製造に必要な鋳造製品や電子部品の供給が滞ることで、軍事力の維持が困難になった。
さらに造船業や軍需産業に必要な熟練技術者の高齢化が進み、後継者不足が目立っている。これにより、軍艦の建造能力が低下し、米国の海軍力に悪影響が及んでいる。
防衛予算の偏りも顕著で、ハイテク兵器(ドローン、AI兵器など)への予算が集中し、従来の兵器や艦艇の建造に十分な資金が回っていない。そして地政学的影響も無視できない。米中対立の激化により、米国の防衛産業は新たな戦略を求められているが、中国の急速な軍需産業拡大に追いついていない。
一方、日本の造船業の現状に目を向ければ、日本は世界の造船市場で中国・韓国に次ぐ第3位のシェアを持っているものの、上位2国との差が大きく開いている。日本の造船業は韓国や中国に比べて企業の規模が小さく、人員不足で生産基盤が弱まっているが、技術力では世界的に高く評価されている。