2023年の中国の新造船受注量の世界シェアは66.6%だが、2024年の新造船受注量を見ると中国は74.1%とさらに上昇している。軍事用と商業用の境目なく国家主導で造船を進める中国は海軍の規模でも米軍を大きく引き離しつつある。
中国の造船能力の拡大を阻止し、海軍力の拡大を目指すため、米政府は、同盟国である世界造船2位の韓国、3位の日本と一体で米国の復活を図ろうとしている。
第1の目的は、商業船舶を軍事用に転換できる設計で製造するよう日本に提案する。建造需要を高く保ち、技術革新やコスト削減につなげる効果を見込む。対する中国は、大量のRO-RO船を建造しようとしている。RO-RO船は、フェリーのようにランプを備え、トレーラーなどの車両を収納する車両甲板を持つ貨物船のことである。車両甲板のおかげで搭載される車両はクレーンなどに頼らず自走で搭載・揚陸できる。戦車さえも揚陸可能とされ、台湾有事を睨んでの大幅造船計画だとの指摘もある。
第2は、平時での協力を強化する。横須賀などに前方展開している米軍艦船を日本の民間造船所で試験的に整備・修理・オーバーホール(MRO)しているが、これを拡大する。インド太平洋地域で活動した船舶が米国に頻繁に戻るコストと時間が削減でき、同盟の強化にも寄与する。
第3は、日本企業に米国の造船所への投資を促す。日本の技術や資金を活かして、衰退した米国内の造船所の再生を狙う。
米国の造船業がこれほどまでに衰退した原因はどこにあるのだろうか。
米国の造船業衰退の原因
米国の造船業は、1981年、レーガン政権の商業造船補助金制度の撤廃により、大きく後退し、4万人の労働者のレイオフをはじめ、造船業界全体が崩壊するに至った。当時、レーガン大統領は、「レーガノミックス」と言われた経済政策を推進して、スタグフレーションからの脱却を図るため、インフレの抑止と不景気からの脱出を目指していた。