Q:オリジナル作品を作ったクリエイターが権利を主張でき、支払われるような仕組みはできないのでしょうか。

栄藤:技術的には非常に難しいです。たくさんの人が参加してコンテンツを作れるような社会にしていくのか、それともクリエイターの権利を守っていくような世界にするのか、この両立をどうやって図るかという話で、AIで作ったことを明示するか否かという、倫理的な社会の設計に落ちていくのだと思います。

小沢:僕はAIを使ったことを明示する必要はない派ですが、追加学習の部分に関しては、権利を主張できる時代がそんなに遠くない未来に来ると思います。元のところからやるのは仕組み上難しい気がしますが。学習の対価に関しても、基金的なものを作って、漫画業界全体あるいはクリエイター全体のために還元する形が現実的な落とし所だと思います。

以上でRIETI講演の紹介を終え、DCAJ講演の紹介に移る。講演では小沢氏のプレゼンに先立って、ジャーナリスト/専修大特任教授の松本淳氏が「生成AIをデジタルコンテンツ制作にどう活かす?」というイントロ講演をした。小沢氏のプレゼン内容と共通する部分もあるが、概要は以下のとおり。

「〇〇」風は私的使用のための生成(複製)であれば著作権侵害には当たらないが、既存の著作物との「類似性」および「依拠性」が認められるAI生成物を公表 販売する場合は、利用許諾が必要。

著作権侵害か否か、という問題の他にも倫理的な問題、パレスチナとの争いでイスラエル軍を美化するような投稿にジブリ風の絵が用いられていたり、とても作家にリスペクトがあるとは思えないような使い方がされている。そこは著作権とは別に問われるべき問題。

とはいえ自分の専門分野のアニメでも人手不足、原作不足、競争環境の激化などで、生産性が求められる環境で、生成AIを活用しない選択肢はないが、 現状の生成AIによる「一発出し」では、著作権侵害や 模倣を指摘されるなど クレームの恐れもある。商業的にはクオリティが十分ではない。

製作工程のどの段階でどのように活用すれば クオリティを担保しつつ、生産性が上がり、諸課題を解決できるのか伺いたい。

などと述べて、小沢氏の講演につないだ。