宗教やセクシャルな表現に関しては、今後ぶつかるところは出てくるとの懸念は要注意である。続いて、質疑応答から。

(前略) Q:日本の漫画の国際競争力をどのように見ていますか。

小沢:海外の本は開きが逆なので昔は海外出版の際に裏焼きしていましたが、今は日本の開きのまま出版していますし、文化としてもちゃんと伝わっています。今後も日本式の漫画は海外で戦っていけるものだと思っています。

Q:作品の映像化をめぐる権利の課題について、ご意見をお聞かせください。

小沢:多くの出版社で過去の事例を含めて真剣に検証され、対策が練られているところです。漫画と映像は別表現なので変えざるを得ないですが、体感では、アニメ化に比べて、ドラマ化・実写化で原作者の満足度が低い印象は受けています。これはおそらく芸能界特有の事務所の力関係や配役によるもので、昔はうまく機能していたのかもしれませんが、今の時代にはそぐわない状況になってきてしまっているのかなという気はします。

アニメ化に比べて、ドラマ化・実写化で原作者の満足度が低いとの印象に関連して、テレビ業界も関係する話だが、セクシー田中さん事件が思い出される。日本テレビ系でドラマ化された漫画「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんが、2024年1月末に自殺した事件。芦原さんは亡くなる数日前、自身のXで、原作がドラマ化で大きく改変されたとしていた。

「漫画家の「心を守る権利」はなぜ奪われるのか ドラマ化で原作改変される一番の原因」は、「ドラマ化で原作が改変される一番の原因は、テレビ局側と出版社側とのコミュニケーション不足にある」と指摘する。

以前、ネットフリックスジャパンの杉原佳尭ディレクター・公共政策担当から、エンタメ業界はコンサバだという話をきいたことがある。前職が同じ外資系でもグーグルジャパンだったので、そのギャップも感じたのかもしれないが、後述するとおり、政府はコンテンツ産業を基幹産業に位置づけようとしている。基幹産業とするにはこうした今の時代にそぐわない旧弊を一刻も早く打破する必要がある。