肥料になった聖なる猫? 18万匹の猫のミイラオークション

 1889年、エジプトの古代墓地ベニ・ハサンで、膨大な数の猫のミイラが偶然発見された。これらは約3000~4000年前、神々への捧げ物として飼育され、ミイラにされた猫たちだった。しかし、近代における扱いは、お世辞にも敬意に満ちたものとは言えなかった。

 発見した地元の子供たちは、ミイラで猫の喧嘩ごっこをして遊び、毛皮や包帯をまき散らしたという。さらに、リバプールのオークション会社「ジェームズ・ゴードン&カンパニー」は、この古代の遺物をより実用的に利用しようと考えた。なんと、18万匹もの猫のミイラをイギリスに船で送り、オークションで販売したのだ。

 しかし、1890年2月10日のオークションは、すぐに茶番と化した。丁寧に梱包されたはずの子猫たちは、人々の手の中でボロボロに崩れてしまったのだ。ある猫の後ろ足は5シリング(現在の日本円でおそらく7000〜8000円程度)で売れたが、全体としては大失敗。ほとんどの猫のミイラは、最終的に肥料として売却される羽目になった。

 当時のイギリスの報道機関はこれを「ファーティライザー(毛皮肥料)」と皮肉った。あるロットは1トンあたりわずか6ポンド弱(現在の日本円でおそらく十数万円程度)で売られ、伝えられるところによれば、オークショニアは「猫の頭の一つをハンマー代わりにして」無情にもオークションの終了を告げたという。古代エジプト人もびっくりの、あまりにも悲しい結末である。