ゲームやアプリの開発者次第では、仮想恋愛の中に「現実のパートナーシップの価値」をさりげなく織り込むことも可能でしょう。
そうした演出によってAI恋愛を楽しみながら現実の結婚にも良いイメージを持てるよう促すことができます。
また、精神面でのケアとしても、AI恋愛は活用できるかもしれません。
心理カウンセラーなどが、クライアントにとってAI恋人との関係が単なる「デジタルな逃避」になっていないか、本当の対人関係ニーズを補完する「セラピー」になっているかを見極めながら支援することも考えられます。
実際、研究者らは専門家がユーザーに「デジタル逃避と真の社会的ニーズを区別する手助け」をする必要性を指摘しています。
AI恋人との付き合い方次第で、それが心を閉ざす檻にもなれば、羽ばたくためのリハビリにもなると言えるでしょう。
もちろん、この研究にも限界があります。
調査は1回きりの質問紙によるもので、因果関係(ニワトリが先か卵が先か)は明らかにできません。
つまり、「AI恋愛をするから結婚したくなくなる」のか、それとも「もともと結婚に消極的な人がAI恋愛に走りやすい」のかは断定できないのです。
今後、時間を追った追跡研究や実験的な介入研究によって、この因果の方向性を検証する必要があるでしょう。
また、今回は中国の特定のコミュニティでの調査だったため、文化や背景が異なれば結果も違う可能性があり、日本を含め他の国々でも同様の現象が起きるのか注視する必要があります。
AI技術の進歩により、デジタルな恋人たちは今後さらに高度で魅力的な存在になっていくでしょう。
それに伴い、人とAIの関係性もより複雑で身近なものになっていくはずです。
AI恋人が現実の恋人に取って代わる未来が訪れるのかどうか、その答えはまだ出ていません。
しかし、この新しい恋愛形態を「脅威」として一括りにするのではなく、うまく付き合っていく方法を模索することが重要だという指摘もあります。