2013年の映画『her/世界でひとつの彼女』では、孤独な男性が人工知能(AI)と恋に落ち、AIとの甘く切ない恋愛を描きました。
それから10年あまり――現実の世界でも、AIキャラクターを「恋人」として愛する人々が登場しています。
SFが現実になりつつあると言っても過言ではありません。
例えば米国では、ニューヨーク在住の女性が自分で作り上げたAIの恋人「エレン」との結婚を宣言し、話題となりました。
彼女はこのデジタル恋愛によって「過去の心の傷が癒やされ、安心感を得られた」と語っています。
そんななか、中国の南京理工大学(NUST)で行われた研究によって、AIキャラクターとの恋愛がある人には現実の結婚願望を奪う「代用品」として働くことが示されました。
AIとの恋愛は現実の恋愛や結婚を阻害する要因になりえるのです。
一方で、別の人にはAIの恋人は自己効力感を高めて結婚への一歩を踏み出させる「恋愛リハビリ」として働くという、利点も存在することも明らかになりました。
誰からも求められない人生は辛いものですが、AIと恋に落ちることで人間たちは自信を取り戻し、現実の結婚へと繋げられる可能性も見えてきたわけです。
AI時代、人間の恋愛感はどのように変化していくのでしょうか?
研究内容の詳細は2025年05月01日に『Archives of Sexual Behavior』にて発表されました。
目次
- 「AI恋愛」×「結婚離れ」の方程式
- 『AI恋人』がリアル婚を食い尽くす
- AIが奪うもの、与えるもの
「AI恋愛」×「結婚離れ」の方程式

ここ数年、スマートフォンを開けば“理想の恋人”がポップアップで会いに来る──そんなデジタル恋愛が静かに浸透しはじめています。
背景には「結婚したくても踏み出せない」若者の増加があります。