中国では婚姻件数が2013年の1,347万組をピークに右肩下がりとなり、2023年はわずか768万組と約4割まで縮小しました。

同じ傾向は韓国や台湾、日本でも見られます。

社会的プレッシャーと経済的不安の中で、誰かと本気で向き合うことに疲れた人たちが、逃げ場としてAIコンパニオンを選んでいるのです。

技術側の進歩も後押ししています。

対話AI「Replika」の課金ユーザーは全世界で250万人を突破し、恋愛シミュレーションゲーム『光と夜の恋』は24時間以内に1000万ダウンロードを記録しました。

こうしたサービスは、ただテキストを返すだけでなく、声や表情・バーチャル空間での“デート”体験まで提供し、ユーザーは現実さながらの満足感を得られます。

しかしこのムーブメントをどう評価するかで、専門家の意見は大きく割れています。たとえばCroes&Antheunis (2021)の縦断研究は「AIとの長期的な関係が孤独感を軽減する」と報告した一方、Pentina ら (2023)は「依存が進むほどオフラインでの婚活意欲が下がる」と警鐘を鳴らしました。

心理学者のシンディ・リュー氏は「AI恋人は社会不安を和らげる“練習台”にもなれば、現実逃避の温床にもなる」と語ります。

利用者の目的と心の状態によって、その影響は真逆になり得るのです。

今回取り上げる南京理工大学(NUST)の調査は、この“二面性”を定量的に可視化しようとしたものです。

AIとの恋愛が現実の結婚願望を削ぐのか、それとも背中を押すのか──AI時代の恋心は、いったいどちらへ転ぶのでしょうか?

『AI恋人』がリアル婚を食い尽くす

『AI恋人』がリアル婚を食い尽くす
『AI恋人』がリアル婚を食い尽くす / Credit:Canva

この研究では、中国人の男女503名を対象にオンライン調査が行われました。

調査参加者は直近1年以内にAIキャラクターとの恋愛を経験した人たちです。