また、ロゴゾフがセルフ手術を行ったわずか18日前には、同じソ連の宇宙飛行士であるユーリ・ガガーリン(1934〜1968)が、ボストーク1号に乗って人類初の有人宇宙飛行を成功させていました。

奇しくもロゴゾフとガガーリンは同い年(しかも同じ3月生まれで、ロゴゾフは14日、ガガーリンは9日生まれ)であり、2人はソ連の英雄として大々的に国民に宣伝されたのです。

ところが、ロゴゾフは英雄扱いされるのを嫌い、世間の人気者になることも避けました。

帰国した翌日には自分の病院に戻って、普通の医者として一生を過ごしたそうです。

彼の息子であるウラジスラフ・ロゴゾフ(Vladislav Rogozov)氏は、父の人生から学んだことをこう述べています。

「もしあなたが絶望的な状況に陥り、一切の勝算も潰えたと思ったとき、あなたはどうするでしょう?

たとえ、最も過酷な環境の中にあっても、決して諦めてはいけません。

自分を信じ、生きるために戦い抜くのです」

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参考文献

The man who cut out his own appendix
https://www.bbc.com/news/magazine-32481442

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: 大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。