(※ただこちらの研究で「手術を受けていない側」となったのは広く一般の人であり、前述の研究とは対照群が異なるので注意が必要です)
研究チームは「性別適合手術と自殺リスク上昇との間に統計学的に有意な関連が認められた。このことは術後の包括的な精神科的サポートの必要性を強調する」と述べています。
ただし、具体的なサンプル数や追跡期間などの詳細は異なるため、結果を直接比較する際には注意が必要です。
特に注意すべき点として、どちらの研究も相関関係を示すに留まっており、精神障害や自殺の直接的な原因を性別適合手術と断定するような、因果関係を立証するものではありません。
研究チームは「性別適合手術を受けた人でリスクが高まるという相関関係は確認したが、介入前後を厳密に比較したわけではないため、さらなる研究が必要だ」と述べています。
性別適合手術をするとメンタルリスクが増加する傾向がある

今回の一連の研究は、性別適合手術が決して「心の万能薬」ではない現実を突きつけました。
身体の性を望む姿に近づけることは、性別違和の軽減に役立つ重要なステップです。
それでもなお、長年の心の傷や不安が手術だけですべて癒えるわけではないことがデータから示唆されています。
研究チームも論文中で「性別適合手術はトランスジェンダー当事者のアイデンティティ確認には有益だが、同時に術後のメンタルヘルス問題リスクの増加が見られる。これは術後も継続した配慮ある精神的サポートの必要性を浮き彫りにしている」と強調しています。
言い換えれば、身体的な治療と並行して心のケアを手厚く行う二本立ての支援が欠かせないというメッセージです。
ではなぜ手術を受けた人々の方がメンタルヘルス指標が悪化しているように見えるのでしょうか。
一つ考えられるのは、もともと手術を決断するほど性別違和が強かった人々が多く含まれている可能性です。