特に顕著だったのはうつ病と不安障害です。
例えば出生時に男性であるトランス女性の場合、手術を受けたグループでは25.4%の人が術後2年以内にうつ病と診断されており、手術を受けていないグループの11.5%と比べて2倍以上の有病率となりました。
不安障害に至っては、手術を受けたグループが12.8%に対し、手術を受けていないグループは2.6%で、実に約5倍もの差がみられました。
出生時に女性であるトランス男性の場合も、うつ病は22.9%対14.6%(約1.6倍)、不安障害は10.5%対7.1%(約1.5倍)と、手術を受けた方が明らかに高率でした。
また自殺念慮や物質使用障害についても、性別適合手術を受けたグループで有意なリスク上昇が確認されています。
興味深い点として、身体を女性化する手術を受けた人では物質依存症のリスクも特に高かったことが挙げられます。
これらの結果はデータ数の多さとも相まって、統計的に非常に強い確証度があり、偶然の誤差で説明できるものではありません。
類似の結果は自殺や自傷行為に注目した別の研究でも報告されています。
テキサス大学医療支部のチームによって行われた研究では、2003 年から 2023 年までのデータを用い、性別適合手術を受けた成人 1,501 名と、手術歴のない対照群(約 1,560 万名)を比較しています。
こちらも救急外来受診者の記録という膨大なデータセットから抽出・マッチングを行い、術後 5 年間の自殺未遂、死亡、自傷、心的外傷後ストレス障害の発症率を調べました。
結果は衝撃的で、性別適合手術を受けた人の自殺未遂リスクは、受けていない人の実に約 12 倍にも上りました。
数字で示すと、手術を受けたグループでは 3.5% の人が術後 5 年以内に自殺を試みたのに対し、手術を受けていないグループでは 0.3% 程度でした。
死亡や自傷のデータも合わせ、「性別適合手術を受けた人は自殺関連のリスクが著しく高い」という結論が導かれています。