ところが、この魔法はいつまでも続くものではありませんでした。

能力の開花は事故から約4カ月つづいたものの、TBIから回復するにつれて徐々に薄れていったのです。

今では音が目に見えることも、寝ずに作曲することもないといいます。

男性は4カ月の間に数多くの曲を残しましたが、回復後は夜中に作曲をしたこと自体もよく覚えていませんでした。

後で奥さんと一緒にそれらの曲を聴いたとき「興味深いが奇妙な感じだった」と評しています。

一方でアコスタ氏らは「男性の症例は本当に稀なケースであり、脳の損傷は基本的には患者に悪影響しか与えない」と注意を促しました。

誰もそんなことはしないと思いますが、超能力を手に入れるためにわざと頭をぶつけるようなことは止めておきましょう。

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参考文献

Musician’s head injury triggered rare synesthesia, causing him to ‘see’ music
https://www.livescience.com/health/neuroscience/musicians-head-injury-triggered-rare-synesthesia-causing-him-to-see-music

元論文

A case report of acquired synesthesia and heightened creativity in a musician after traumatic brain injury
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/13554794.2023.2208271?journalCode=nncs20

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。