ある音楽家の男性がバイク事故後に”音が見える”ようになったという珍しい症例報告がなされました。
米ヴァンダービルト大学医療センター(VUMC)の担当医によると、匿名の男性(66歳)は、事故による脳損傷が原因で「共感覚(シネステジア)」を発症したと考えられるという。
共感覚とは、音に味がするとか色に匂いがするなど、別々の感覚が混ざり合う現象です。
男性は事故後に、音を聴くだけで「音符が楽譜に書かれて見えるようになった」と話します。
さらに以前に増して、作曲への意欲や創造性が格段に高まったとのことです。
研究の詳細は、2023年5月7日付で医学雑誌『Neurocase』に掲載されています。
目次
- バイク事故で「音が見える」ようになった男性
- 作曲への「創作意欲の高まり」も同時に現れた
バイク事故で「音が見える」ようになった男性

現在66歳の男性は作曲家や演奏家としてキャリアを経たのち、音楽教師として生活していました。
しかし2021年にオートバイの衝突で、車体から9メートルも投げ飛ばされる大事故に遭います。
何とか一命は取り止めたものの、救急搬送された病院で脳の表面に血溜まりができていることが分かりました。
専門的には「硬膜下血腫」と呼ばれる状態です。
ただ手術が必要なほどの血溜まりではないと判断されたため、搬送から3日後に退院しています。
それからしばらくして、男性の身にある変化が起こりました。
いつものように音楽を聴いていると「音符が目に見えるようになった」のです。
生演奏でも録音された音源でも、まるで音符が五線譜の上に乗っていくように感じられたといいます。
それに加えて、音を聴くだけで正しい音階が分かる、いわゆる「絶対音感」も発現しました。
どちらも事故前には持っていなかった能力だといいます。