これについて医師たちは「外傷性脳損傷(traumatic brain injury:TBI)によって、別々の感覚が相互に混ざり合う”共感覚(シネステジア)”を発症した可能性が高い」と指摘します。

共感覚は珍しい神経症状で、約2000人に1人の割合で発生するという。

共感覚を持つ人の多くは生まれつきですが、脳損傷後に共感覚を獲得する例も多数あります。

実際、共感覚かどうかを評価する「シネステジア・バッテリー(Synesthesia Battery)」というオンラインテストを男性に受けてもらったところ、確かに「音によって視覚的イメージが誘発されている」ことが確認されました。

共感覚が生じる神経学的なメカニズムはまだ解明されていませんが、「外傷による脳内の新しい結合が関係している」と医師たちは考えています。

その説明によると、普通の脳では、ある刺激(たとえば音)が無関係な感覚(視覚や嗅覚)を誘発しないようになっていますが、ケガにより脳内の神経が変化することで、異なる感覚同士をつなげる通路ができてしまうというのです。

ただし、どういう感覚の組み合わせが生じるかは分かりません。

共感覚では音に色が見えたり、文字に触覚を感じるという
共感覚では音に色が見えたり、文字に触覚を感じるという / Credit: ja.wikipedia

彼の場合は聴覚と視覚が結びついたようですが、これがどういった脳内の作用で起きているかはまだ正確に説明はできないようです。

そして今回、男性はバイク事故で共感覚が目覚めただけでなく、他にも驚くべき変化が現れました。

作曲への「創作意欲の高まり」も同時に現れた

男性は共感覚を発現すると共に、作曲への創作意欲が異様に高まったといいます。

特に深夜の午前0時から4時の間に創造性が爆発し、寝る間も惜しんで作曲に没頭するようになったそうです。

男性は医師に「私は常に曲を書くようになりました。なぜか書かずにはいられなくなったのです」と話しています。