Marrion Oil and Gas(米国のシェール事業者)は「Drill Baby Drill と原油価格低下は両立不可。トランプ政権が経済を悪化させ、原油価格が生産コストと同水準かそれ以下で推移すれば、規制障壁を撤廃しても、企業は新たな井戸の掘削に消極的になることは不可避だ」と述べている。

そもそもトランプ関税が市場を急落させる前から、米国の大半の生産者は今年度の成長目標を2%から3%程度の控えめな水準に設定し、新たな井戸への投資ではなく株主への現金還元を優先してきた。原油価格がさらに下落すれば、更に新たな井戸への投資に対して保守的な姿勢を強める可能性が高い。

シェール石油企業が利益を出すためにはWTIが少なくとも$65で平均することが必要であるとされている。$60台前半になれば今後6ヶ月間で掘削を縮小する企業が増えることになる。しかしゴールドマン・サックスは、WTIの価格予想を2025年12月までに$58、来年末までに$51に引き下げた。

既に石油・ガス産業への影響は出始めている。テキサス州の石油・天然ガス産業は過去2年間で記録的な生産量を報告し、数ヶ月間雇用を増加させ、米国の雇用創出を牽引したが、2025年3月には上流部門(主に石油豊富なパーミアン盆地で掘削を行う部門)で700人の雇用を削減した。テキサスにおけるシェールのリグ数は2024年3月の376から2025年3月には290に低下した。

クリス・ライトエネルギー長官がCEOを務めたリバティ・エナジーの2025年第1四半期の利益は2022年第1四半期以来の最低水準を記録し、トランプ政権発足後、リバティの株価は40%下落した。このため米国の石油・ガス業界の経営者は全体的に悲観的な見方を示しており、企業見通し指数は12ポイント低下し、見通し不確実性指数は21ポイント上昇している。

石油価格はトランプ関税以外にも地政学的緊張、OPEC+の生産戦略の動向などにも影響を受けるが、現在の価格水準ではガソリン価格低下につながってもDrill, Baby, Drill にはとてもつながりそうにない。