ODAの現状と課題

表3を見て驚くのは、この時代の日本のODAは世界一だったことである。もっとも2021年現在でもアメリカ、ドイツについで第3位である。

このODAがそれを受け取る国の「内発的発展」にどのように貢献してきたを軸に論点を整理して、ODAを出す側の文化や価値観と受ける側のそれらの相違が顕著な場合では、せっかくの貴重な資金が活かされないという報告もした。なぜなら、当時も(今も)多額のODAによる経済的な成長への「離陸」(ロストウ)ができない事例も多々あったからである。

経済的「離陸」の条件

経済的に「離陸」するためには、国民全体の「就学率」と「識字率」を高め、住宅や医療や衛生などの民生面を充実させる努力が前提になる。

せっかくODAによって最新の工場が建設され、港湾や道路や学校が作られても、それを国民全体でどう活かすかという「内発的」プログラムがなければ、その国全体の「離陸」には結びつかない。

外国人労働者の問題

資金面でのODAに加えて、国際化の論点としてはいわゆる外国人労働者問題がある。このうち、日本在住の外国人労働者は年々増え続けて、2024年10月現在では230万人に達しているが、1990年当時では合法的就労と不法残留者の就労の合計が20万人程度であった。

それらの実状を踏まえて、世界システムの趨勢はボーダーレス時代ではあるが、労働者の入国に関しては西ドイツ(現ドイツ)のトルコ人、フランスのマグレブ諸国からの移民の経験により、「ボーダーリング」現象が顕著になってきたとまとめた。

先進国と途上国との経済格差を助長

文化や価値観の相違が大きくて、流入した外国人との国民との間にある社会的距離の増大、定住困難、住みわけなどが目立つようになった。

さらに流入する外国人の多くが、その母国では優秀な人材であることも多く、この人々が日本国内で未熟練労働に従事することは、送りだした国の労働事情をむしろ悪化させて、その積み重ねは、先進国と途上国との経済格差を助長する危険性をはらむ場合もあるとした。

高齢化と福祉化については次回