憲法記念日にはあらゆるメディアが、1日限定の「護憲・改憲」操業に入るわけだが、読むべき中身はほぼない。その理由もはっきりしている。
「平和憲法を守れ」という知識人は、平和憲法を守ろうと思っている読者が必ず読む『世界』という雑誌にみんな書いている。憲法を改正すべきだとする読売の雑誌とは棲み分けて。憲法を守りたいと思っている人に、「憲法を守れ」と説くなんてある意味では無用なことのようにも思える。
『情況』1995年10月号、121頁 (強調は引用者)
前回の記事で採り上げた、戦後50年に際しての坂野潤治氏(日本政治史)のインタビューにある言葉だ。そこから30年のあいだには、ネットやSNSや動画配信がこの構図を変えるのではと期待もされたけど、結局ダメだった。
とはいえ、海外でリアルな戦争が続くいまこそ、「平和憲法」の下で歩んできた戦後日本とはなんだったのか、考え直す意義は小さくない。新刊の発売にむけ読み直していた、加藤典洋さんの遺作に、その手がかりを見つけた。
単行本としては生前最後の刊行(2019年4月)になった『9条入門』に、こんな一節がある。「全面講和か単独講和か」とは、戦後史で一度は耳にしてすぐ忘れる用語だけど、こうまとめられると少し不意を打たれる。