この観測によって測定されたのが、ロスランド平均直径(Rosseland-mean photospheric diameter)という指標です。
ロスランド平均直径とは、恒星の「表面」を光が自由に飛び出せる層の位置として定義したもので、さまざまな波長での光の通りやすさ(不透明度)を平均して算出しています。
太陽を含め恒星はガスでできているため、「ここからが表面」というはっきりした境界がありません。
太陽を見ていると星の表面らしきものがあるように見えますが、実際はそれはガスの層の1つに過ぎません。そのため特定の波長だけを見ているだけでは、それが正確に星の表面とは言えないため、内部から出てきた光が、ほぼ自由に外へ飛び出せるようになる層を、さまざまな波長をバランスよく平均することで計算し、「本当に代表的な表面」を決めているのです。
この方法を用いて、おおいぬ座VY星の直径は11.3ミリ秒角(mas)と高精度で測定され、物理的な大きさでは太陽の約1,420倍に相当すると算出されました。
人類が見つけていないだけで、理論上はもっと大きな星もあるのか?
観測されている星の中で最大のものは、この「おおいぬ座VY星」が代表的ですが、宇宙は広いため「じゃあ、人類の知らないもっと大きな星もあるのでは?」と考える人もいるかもしれません。
しかし、実は恒星の大きさには上限が存在します。
天の川銀河の中心近くに存在するアーチ星団(Arches Cluster)の観測に基づく研究によると、恒星の質量には上限があり、およそ150個分の太陽質量(solar mass)が限界だと考えられています。
この上限は、放射圧(radiation pressure)と呼ばれる現象が関係しています。恒星は核融合(nuclear fusion)によって内部から強いエネルギーを放ちますが、質量が大きくなりすぎると、中心部での核融合が加速して大量のエネルギーが生じ、これが強い放射圧となって周囲のガスを押しのけてしまうのです。