気温変動が引き起こす送電線の「揺れ」
極端な気温の変化は、超高圧送電線に奇妙な振動を引き起こすことがある。これは物理的な前後の揺れだ。気温の変化によって送電線の一部が膨張し、線内の張力が変化する。これにより空力特性が変わり、風や電流との相互作用によって、送電システムが物理的にも電気的にも不安定になる可能性があるのだ。
英国ポーツマス大学の電力システム工学教授、ヴィクトル・ベセラ氏は声明の中で、「調査は進行中だが、初期のメディア報道の一部は、スペイン内陸部の異常な大気条件(急激な気温変動やそれに伴う風のパターンなど)に関連する『誘発性大気振動』として知られる現象に言及している」と述べた。「もしこれらの条件が存在していたなら、超高圧送電線に異常な振動を引き起こした可能性がある」と彼は指摘する。
この種の振動は、送電線の断線や短絡(ショート)、あるいは送電塔のような重要インフラの損傷に繋がる恐れがある。 もちろん、電力システムには保護機能が備わっており、異常が発生した際には影響を受けた送電線を自動的に切り離すように設計されている。しかし、ベセラ氏によれば、この保護システムの作動が、かえってドミノ倒しのような連鎖反応を引き起こすことがあるという。
一部の送電線が停止することで、他の部分に負荷がかかり、不安定化。結果として、一部の発電機までもが停止に追い込まれる可能性があるのだ。そして、大規模な発電能力が失われれば、電力の供給と需要の間に深刻な不均衡が生じ、それが停電を広範囲へと波及させる「引き金」になり得る、とベセラ氏は解説している。