この時点でローターの回転は初期より十分遅くなっており、もう増幅の条件を満たさなくなったためです。
つまりローター自身がエネルギーを吸い尽くされてしまったわけです。
実際、出力の成長に合わせてローターの回転速度がわずかに落ちていく様子も観測されており、回路内に取り出されたエネルギーがローターの運動エネルギーから供給されていた確かな証拠となりました。
「指数関数的に成長する信号とそれに対応したローターの減速」という現象は、まさにブラックホール爆弾理論が示す振る舞いそのものです。
ブラックホール爆弾の場合も、ブラックホールの回転が鈍れば超放射の条件が崩れて増幅が止まると予想されており、今回の実験はそのアナロジーを忠実になぞってみせたのです。
量子真空・暗黒物質探査の新兵器

このようにして、研究室内における史上初の「ブラックホール爆弾」の再現に成功したわけですが、これは一体どんな意味を持つのでしょうか。
まず第一に、50年来の物理学の問いに対するエポックメイキングな実証であることは間違いありません。
ゼルドビッチが予言し、誰もが「無理だろう」と思っていた回転体によるエネルギー増幅が、工夫次第で実現可能であると示されました。
音波での検証や低周波での兆候は以前からありましたが、電磁波という本命の領域で実際に正の増幅と自発発振(自己振荡)を確認できた意義は極めて大きいです。