もちろん実験の「爆弾」は安全な玩具モデルであり、すぐに宇宙エネルギーを取り出せる技術に直結するものではありません。

しかし、この成果によってブラックホール物理で議論されてきたエネルギー増幅メカニズムが現実のものとして目の前に姿を現したのですから、科学者たちの興奮は大いに高まっています。

最後に、今回の研究成果を踏まえて研究者のコメントを紹介しましょう。

論文著者の一人は、その意義を次のように語っています。

「私たちの実験は、回転する吸収体から回転エネルギーを引き出して電磁波を指数的に増幅できることを、低い周波数領域で示しました。

さらに興味深いことに、この不安定な増幅がオンとオフを切り替えられる(ローターのエネルギー損失によって増幅が停止する)ことも示したのです」。

半世紀前に提唱された理論に実験で光を当て、新たな知見を加えたこの成果。

史上初の「ブラックホール爆弾」の創出は、宇宙と量子の交差点に新たな扉を開いたと言えるでしょう。

今後、この小さな爆弾からどんな物理学の花火が打ち上がるのか、楽しみに待ちたいと思います。

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元論文

Creation of a black hole bomb instability in an electromagnetic system
https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.24034

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部