しかし近年になって、このゼルドビッチ効果を間接的に確かめる実験的進展がいくつか現れます。

例えば2020年には音波(音のねじれた波)と回転する円盤を使ってエネルギー増幅を確認する「音響版ゼルドビッチ効果」の実験報告がなされました。

音波は光よりずっと遅いため、比較的ゆっくりした回転でも条件を満たせたのです。

また低周波の電磁波と回転体を組み合わせた研究で、見かけ上の「負の抵抗」(エネルギー供給側に回る現象)が観測された例もあります。

しかし肝心の正味の信号増幅や自発的な波の生成(入力なしで波が生まれる)といった決定的な証拠は、これまで得られていませんでした。

こうした背景のもと、サウサンプトン大学やグラスゴー大学などからなる研究チーム(著者ら)は、満を持して電磁波によるゼルドビッチ効果の本格実証に挑みました。

しかも単に増幅させるだけでなく、ブラックホール爆弾のような暴走的フィードバックを引き起こすことが最終目標としました。

筆頭研究者のマリオン・クロムブ氏は「改良によって『ブラックホール爆弾』に似た状況――つまり増幅が正のフィードバックとなって回路内の出力が指数関数的に跳ね上がる現象を実現したい」と述べていましたす。

果たして理論は果たして現実のものになったのでしょうか?

ブラックホール爆発が実験室で実現

ブラックホール爆発が実験室で実現
ブラックホール爆発が実験室で実現 / 実験に用いられた装置の写真。中央に見える茶色の円柱が回転するアルミニウム製ローター(半径約3cm)で、その周囲を囲む黒い構造が3相の電磁コイル(固定子)とフェライトコア(磁心)である。電磁石コイルで回転磁場を発生させ、ローターとの相互作用を高める工夫がされている。/Credit:: University of Southampton

研究チームの実験装置は、一見すると電気モーターのようにも見えるシンプルなものです。

中心にはアルミ製の円筒ローターがあり、高速で回転させることができます。