簡単に言えば、波がブラックホールの回転ベルトに乗って「おんぶ」してもらえるくらい遅いと、ベルトから力をもらってどんどん大きくなります。

この散乱増幅現象を超放射(スーパーレディアンス)と呼びます。

音で例えるならば、回転する装置に音波を注ぎ込むと「音の高さ(周波数)はそのまま」で「音の大きさ(エネルギー)が増幅された」音が返ってくることがあります。

これは、装置が自分の回転エネルギーを音に与えた結果といえます。

このようにブラックホールから回転力を奪うことで、理論上はエネルギーを獲得できるのです。

とはいえ、ペンローズ過程や超放射で一度に取り出せるエネルギーには限りがあります。

そこで理論家たちは「もっと劇的にエネルギーを引き出す方法はないか?」と発想を飛躍させました。

その一つが1972年にPressとTeukolskyによって提唱されたブラックホール爆弾のシナリオです。

これは、回転ブラックホールの周囲を完全反射する鏡(または閉じ込めの場)で囲めばどうなるか、という思考実験でした。

ブラックホールに投げ込んだ光(電磁波)がエネルギーを増幅され出ててきたところを、鏡で反射して再度ブラックホールに投げ込み、さらに大きなエネルギーとして取り出し、それをさらに反射して……という感じです。

まるで増幅し合うフィードバックのループが暴走し、ついには鏡が耐えきれなくなって「爆発」するか、ブラックホールの回転エネルギーが尽きて暴走が止まるまで続くでしょう。

光は質量を持ちませんが運動量を持つので、ブラックホールと鏡の間には最高でブラックホールの質量の役20%ものエネルギーが蓄積されることがあります。

ブラックホールの質量がとんでもなく大きい場合、蓄積されるエネルギーの量も莫大になり、爆弾として協力無比なものになるでしょう。

この極端な仮想実験が「ブラックホール爆弾」と呼ばれるゆえんです。