難しそうに思えますが、回転する大きなコマの上にBB弾を落とすと、BB弾にコマの回転力が伝えられて「パチン」と勢いよくはじけ飛ぶのと似ています。
BB弾はコマからエネルギーを貰い、コマはそのぶんエネルギーを失います。

回転コマをブラックホールに置き換え、BB弾を投げ込むとすると、BB弾はエルゴ領域に入った瞬間、パチンと二つに割れることになります。
そして片方のかけらはブラックホールにのみ込まれ、回転エネルギーを“借金”として抱えたまま内部へ沈みます。
もう片方は、回転する時空の「反発バネ」に弾かれて元より速く飛び出し、奪ったエネルギーをそっくり外へ持ち出す――これがペンローズ過程のイメージです。
この場合も、BB弾の加速したぶんだけ、ブラックホールのエネルギーが失われます。
つまり理論的には、ブラックホールに何かを落とすだけで、その何かが加速力というエネルギーを受けることができるわけです。
もし加速するほうに糸なりなんなりを結び付けて発電機につなげば、ブラックホールに物を落とすだけで発電が可能になります。
(※時空が引きずられる領域から脱出するのは極めて困難ですが、理論的にはあり得ます)
このエネルギー取り出しプロセスはペンローズ過程と呼ばれ、理論上ブラックホールの質量エネルギーの最大20%程度(より正確には21%程度)まで抽出可能だとされます。
つまりブラックホールを原動力とする最も原始的な「縮退炉」になるわけです。
さらに物質ではなく波(光や電磁波)でも似たことが起こり得ます。
ただ増幅が起きるのは、ブラックホールが自転する速さよりも“ゆっくり回る波”を当てたときです。