監督署に行ってパワハラの申告をしたら、話は聞いてくれたがなにもしてもらえなかった、とがっかりしている人を時折見かけますが、そこには上のような管轄の問題があるのです。

【誤解②】パワハラの通報先は労働基準監督署である

パワハラの通報先は労働基準監督署である、これは半分正解で半分間違いです。

パワハラの相談をしに労働基準監督署に行くこと自体は適切な行動です。しかし、パワハラの相談を受け付けてくれるのは、監督署の中にある「総合労働相談コーナー」という窓口です。

実はここは、場所としては監督署の中にありますが、組織としては監督署の一部ではなく、労働局の雇用環境・均等部(室)の管轄になっています。

なにが違うの?と思われるでしょうが、最も大きな違いは、運営の根拠となる法律が異なることです。

監督署が所掌する主な法律は、先ほど見たように、労基法、安衛法、労災法の3つです。一方、労働局雇用環境均等部(室)の扱うハラスメント関連の法律は、次のようなものです。

・労働施策総合推進法(パワハラ防止法) ・育児介護休業法 ・男女雇用機会均等法 ・個別労働関係紛争解決促進法

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が取り扱う法律に入っているので、パワハラについての役所の窓口は「総合労働相談コーナー」(労働局 雇用環境・均等部(室))なのです。セクハラやマタハラも同じく「総合労働相談コーナー」が窓口になります。

パワハラ禁止の法律と会社の役割

この労働施策総合推進法に「パワハラ禁止」という内容が入ったのは比較的最近で、2020年に大企業が対象となり、2022年から中小企業も対象になりました。

見出しに「パワハラ禁止の法律」と書きましたが、実はこれもかなり不正確な言い方で、正確には「パワハラが起こらないよう必要な対策をするのが会社の義務である」という内容の法律なのです。

つまり、公権力がパワハラを直接規制するのではありません。社内規定でパワハラ行為を禁止し、従業員からの相談を受け、加害者には懲戒処分を行うといった事業主の行動でパワハラを防止する、というのが法律の趣旨です。