この制度は、クラブが自前で育成した若手選手をトップチームに登録することを奨励する意味で導入されたが、元々はイングランドのプレミアリーグや米国メジャーリーグサッカー(MLS)、UEFA主催大会で用いられたルールを“輸入”したものだ。極端な話をしてしまえば、イングランドを除く欧州において、UEFA主催のカップ戦に出場しないクラブであれば、無視しても構わないルールなのだ。
このルールをそのままJリーグで採用された意味と考えられるのは、「ちゃんとユースとジュニアユースも強化しなさい」というメッセージが込められていると理解できる。しかし、イングランドでHG選手として認められるのが「イングランド内であれば地域は問われない」のに対し、Jリーグでは事実上「クラブに12歳から21歳までの間で990日間在籍した選手と下部組織出身選手」に限定されている。
このルールでは、大都市が有利となることは明々白々で、実際、JクラブのHG選手トップは前述の通りFC東京の15人。他で10人を超えているのは鹿島(13人)、柏(12人)、川崎(11人)、大宮(11人)。育成がクラブの生命線となっている広島(13人)以外はすべて関東圏のクラブだ。一方、いわき、藤枝、八戸、福島、栃木C、相模原、FC大阪、高知、宮崎に至っては「0人」である。
トップチーム強化だけで精一杯のクラブに対し、「スカウトしてきた若手選手、あるいは下部組織の選手を起用しなさい」と迫るのは厳しすぎやしないか。
ただでさえ少子化社会の中、有望なサッカー少年を下部組織に入団させるだけでもひと苦労だろう。才能ある少年がより高いレベルを求めて、県外の強豪私立高サッカー部に流出してしまうケースもある。分母(=少年サッカー人口)に圧倒的な差があるのだから、それを1つの物差しで比較し「ルール不遵守」と断じるのはナンセンスとは言えないか。
