ネコはどうして家畜化の過程であまり遺伝子変異が起こらずに済んだのでしょうか?

ネコの特殊な「家畜化」

ネズミを捕るネコ
ネズミを捕るネコ / credit:Pixabay

他の家畜動物に比べ、ネコの遺伝子変異が少ない理由は、人間とネコの関係性にあると言われています。

人間は、穀物をネズミから守るためにネコと暮らし始めましたが、ネコに求められた「ネズミを狩る」という行動はネコに元から備わった本能です。

イヌのように特定の動物を襲うような複雑な指示をされるわけでもなく、ネズミが多くいる場所に連れて来られただけで、ネコの認識としては自由に狩りをしているに過ぎません。

ネコにとっては「人間と一緒に暮らす=ネズミの多い場所に住める」といった感じで家畜化というよりはただの「利害の一致」だったのでしょう。

リビアヤマネコが体重5㎏程度と小さく、そもそも人間を襲うような生き物ではなかったことも大きな要因と考えられます。

ネコは人間と暮らす上で、あまり「変わる必要がなかった」のです。

ネコは家畜化してどう変わったか?

鳴いて何かをねだるネコ
鳴いて何かをねだるネコ / credit:フォトAC

とはいえ、遺伝子変異に現れている通り、もちろんネコにも家畜化によって変わった部分があります。

ただ、他の家畜動物の多くが「人間が利用しやすいように」変化しているのに対し、ネコの場合は少し事情が異なっているようです。

まず1つめの変化は「脳の萎縮」です。

イエネコの脳はリビアヤマネコと比べるとかなり頭蓋容積が小さいことがわかりました。

これはイヌやウサギといった他の家畜動物でも見られている傾向です。

家畜動物は人間からある程度安全な環境が与えられることで、他の動物に襲われる危険性や必死に狩りを行う必要性がなくなるため、脳が萎縮すると考えられています。

また、ネコが家畜化したことでもっとも大きく変化したのが鳴き声です。

大人のヤマネコは捕食者や餌となる小動物に気づかれないようにほとんど声を出すことがありませんが、イエネコは大人になってもよく鳴きます。