そのためアインシュタインは、この理論を検証する現象を予測しました。

それは「太陽の強い重力によって、その近くを通る星の光が曲がるはずだ」というものです。

けれど、太陽の近傍は、そのまばゆい光にかき消されて、通常見ることができません。

そのためこの現象を観測するには、太陽の光が遮られる皆既日食のタイミングを狙うしかありませんでした。

しかし、この観測に利用できるような日食は地球上のごく限られた場所で、ほんの数分しか起きません。

つまり、この理論を検証したければ、その日その時間に、その場所に行って観測しなければならなかったのです。

そして実際これをやってのけた人物が登場しました。英国の天文学者アーサー・エディントンは、1919年、大西洋を越えて赤道直下の島、アフリカ沖のプリンシペ島へと、過酷な遠征に旅立ち、皆既日食中の太陽近傍にある星の観測を敢行したのです。

第一次世界大戦直後で世界は混乱しており、装備は不十分、気象条件も予測できない状況でしたが、それでもエディントンは信念を貫き、リスクを承知でこの危険な観測に赴きました。

そしてついに、太陽の近くを通る星の光が、アインシュタインの理論通りに曲がって見える瞬間を捉えたのです。

エディントンが一九一九年に撮影した皆既日食。太陽の右上に恒星が2本線でマークされている。
エディントンが一九一九年に撮影した皆既日食。太陽の右上に恒星が2本線でマークされている。 / Credit:Wikimedia Commons

この結果が世界に報じられたとき、アインシュタインは一夜にして世界的なスターとなりました。

このエディントンの決死の観測がなければ、アインシュタインの理論がいかにすごくても、世界で評価されるのはもっとずっと後の時代になっていたかもしれません。

理論が、現実の世界で確かめられたからこそ、物理学はそれを「事実」として受け入れたのです。

「未解明」という言葉を額面通りに受け取ってはいけない

こうして見ると、「未解明」という言葉は、「全然わかっていない」という意味ではないことがわかります。