本書をさっそく九州大学に博士論文として3月に提出して、文学研究科で最終面接を含む学位審査(主査は鈴木広教授)をしていただいた。その結果、10月13日付で「学位授与」が決定したという通知が本部の事務局長名で届いた。そしてその年の12月に九州大学の会議室で「学位授与式」があり、「学位記」をいただいたのである。44歳での学位であり、これによって翌年教授に昇進した。

博士論文が5刷になった

本来は「博士論文」なので、単著にしても売れないだろうというミネルヴァ書房の予想であったが、たまたま厚生省が地域福祉を強化する方針を打ち出した時期だったので、いくつかの「書評」でも好意的に取り上げていただけた。

なかでも一番驚いたのは、日本都市社会学会誌『日本都市社会学会年報』15号(1997)の特集号のテーマが「都市高齢化と地域福祉」になり、私の巻頭論文を加えて5本の論文が集まったことである。そのような「地域福祉」ブームもあり、本書はなんと5刷まで行ったのである(画像は5刷)。

※ 日本都市学会賞(奥井記念賞)受賞後の5刷

「日本都市学会賞」を受賞した

しかも、その年に北海道都市学会が「日本都市学会賞」の候補として本書を日本都市学会本部に推薦して、翌年の1994年の「日本都市学会賞」を受賞することになった。慶応義塾大学の塾長をされた奥井復太郎先生を記念した「奥井賞」であり、偶然にも授賞式は10月28日に三田の慶応義塾大学で行われた。

北大移籍後のコンピューター操作の練習、初等統計学の独習、科研費による3都市調査の思い出、データ処理とその解読作業、そしてテーマを決めての論文執筆、1冊にまとめ直す作業など10年間の「縁と運」の思い出が浮かんできて、授賞式では感無量であった。副賞の「オノト 万年筆」(丸善)は40年間使ったが、昨年その役割を終えた。

本書により2つ目の学会賞を受賞して、「博士文学」を取得した。その意味で苦労した甲斐があった本であり、その後の私の進路を決定付けてくれた。