マクスウェルの悪魔は分子の動きを全て把握する悪魔ですが、電荷も質量も光との相互作用も持たない特別な電子の運動もパインズは悪魔的と考えたのかもしれません。
(※「DEM-on」には粒子という意味が内包されているため、ここでは便宜上「悪魔粒子」と表記します)
また現代においては、悪魔粒子はさまざまな合金の光学的性質や超伝導において重要であると考えられています。
しかし存在は予測されていても電荷も質量も光との相互作用もない粒子など、普通は検出できません。
私たちはさまざまな物質を重さや電気的性質、光の反射などをもとに「観測」していますが、悪魔粒子はそれらの方法で見ることはできないからです。
そのため悪魔粒子の存在はパインズが予想を行った1956年から現在に至るまで、実際に検出されることはありませんでした。
しかし他の偉大な発見がそうであるように、予期せぬ偶然が状況を変えました。
悪魔粒子の検出は偶然の産物だった

京都大学らの研究者たちは以前から、まだ謎が多い固体中の電子の状態を、反射する電子で確かめようとしていました。
歩いている人にボールをぶつけても、それなりの速度でしか跳ね返ってきませんが新幹線に向けてボールを投げれば物凄い勢いで弾かれると予想できます。
同様に電子の反射する様子を分析することで、電子を当てた固体中の電子の状態を測定することが可能になるのです。
研究者たちはこの電子を使った測定を「ストロンチウム・ルテニウム酸化物(Sr2RuO4)」に対して行っていました。
このストロンチウム・ルテニウム酸化物は30年前にある条件下において超伝導が確認された物質ですが、なぜ超伝導が起こるのかは謎が多く、解明に至っていません。