そして残念なことに、この間違いは修正されることなく拡散していきました。

ニュートンの偉大な点は、古典物理学が誕生する前から引力をはじめとした「見えない力」の存在を確信し、それを現在でも通用する高い近似性をもった数式へと一般化したことにあります。
アインシュタインの相対性理論もシュレーディンガーの波動方程式もニュートンの「見えない力」を扱った物理学を基礎に、それぞれ新たな理論を提唱しました。
そんな自分の第一法則がたった1回の誤訳のせいで、300年後の世界で妙な表現で出回っていると知ったら、ニュートンは驚くかもしれません。
今後もニュートンの第一法則の解釈は間違ったまま、語り継がれるでしょう。
ですがもし、賢い子供が矛盾点を質問してきたならば、コッソリと真実を教えてあげるのもいいかもしれません。
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元論文
Forced Changes Only: A New Take on the Law of Inertia
https://www.cambridge.org/core/journals/philosophy-of-science/article/abs/forced-changes-only-a-new-take-on-the-law-of-inertia/3B1DE948FEEC58CD6EB3627F7976CB8F
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部