また断酒期間を挟んで飲酒が再開するかも調べたところ、サルたちはアルコールに対する興味を失っていました。

この結果は、脳の遺伝子改変によってサルたちのアルコール依存症が治療されたことを示します。

しかしサルたちの脳内で予想通りの反応が起きたかを調べるには、脳サンプルが必要でした。

そのためサルたちは安楽死させられ、摘出した脳が調べられました。

すると脳の遺伝子改変処置を受けたサルたちでは、GDNF(成長因子)とドーパミンの両方のレベルが高くなっていることが判明。

つまり脳の遺伝子を改変されたサルたちは、脳内でドーパミンが過剰分泌されるようになったことでドーパミン不足の問題が解決し、アルコールへの興味を無くしたのです。

人間にも同様の手段が上手くいけば、脳の遺伝子を書き換えることでアルコール依存症を治せるでしょう。

しかし研究者たちは、この方法は最後の手段であるべきだと述べています。

というのも脳細胞に対する遺伝子改変効果は永続するため、元に戻すことができないからです。

ただ命にかかわるほど重度のアルコール依存症である場合、脳の遺伝子改変は1つの選択肢になるでしょう。

研究者たちは、脳の遺伝子改変によるドーパミン不足解消は、お酒だけでなく他の薬物依存に対して有効な手段になる可能性があると述べています。

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参考文献

Gene therapy may offer a new treatment strategy for alcohol use disorder
https://www.eurekalert.org/news-releases/998365

元論文

GDNF gene therapy for alcohol use disorder in male non-human primates
https://www.nature.com/articles/s41591-023-02463-9

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。