禁止の理由は? 約束手形を使って大企業が下請企業をいじめている! どういうことか。たとえば中小企業が部品を製造し大企業に納品する。その折に、120日※2)を超えるような支払期限の長い約束手形を渡す。
※2)それまでは120日最長と決められていたが、2024年の法改正で、現在では60日が最長である。
ビジネスの世界では時はカネなり。だから長い期間、代金が現金化できないというのは“値引き”と同じ。つまり手形が買いタタキに使われている。
このことが最近問題になったある事象との関連で再び注目された。それは“価格転嫁”である。つまり中小企業が大企業から材料を買う。その価格が値上げになったとする。中小企業が製造した商品を他の大企業に売る。ここで値上げしなければ赤字になる。しかし力関係でそれができない。
つまり、価格転嫁ができない。それが中小企業に賃上げが浸透しないひとつの原因と政府は考えている。手形を渡しての買いタタキ、価格転嫁を渋るのも同根の中小企業いじめというわけだ。そのためもあって、国が推進しようとしている賃上げが中小企業に浸透しない。政府は「骨太の方針」とか「新しい資本主義のグランドデザイン」のレポートでこの問題の解決をねらってきた。
“横やり”型の禁止の背景はこれである。手形法の改訂、そして廃止という本筋から事を進めなかったのは、政府がデフレ脱却を急いだからであろうか。
下請企業②
大企業(製造業を念頭に)の下に多くの中小企業が従属している。彼らは大企業を親と呼ぶ。それは逆らうことのできない存在だ。
こんな関係を外国の研究者に説明するのは骨が折れる。下請企業を象徴するうまい英単語がないのだ。よく使われるのは、subcontractorだが、これだけだとcontract(契約)が前面に出る。欧米では契約は対等な主体間で結ばれるべきもので、sub(従)をつけても、主契約を補完するという意味合いに留まり、従属関係は表現されない。