具体的にはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、CBS、ABC、NBC三大テレビネットワーク、有線のニューステレビではCNN、MSNBCなど、日ごろから民主党には優しく、共和党に厳しい。記者たちもみな民主党支持者であることを隠さない。公然たる民主党員であり、民主党への有権登録者ばかりなのだ。そんななかでとくに情報配布の対象が広いAPも同様に民主党傾斜だった。

トランプ政権はその点を百も承知で、APに対して、大統領同行取材、執務室での特別取材を認めないという「優先待遇排除」へと動いたのだった。APがトランプ政権の意向に沿って、「アメリカ湾」という名称を使うようになれば、また話は別なのだろうが、政権の要請には応じなかった。以上は2月の話だった。

ところが4月に入ってトランプ政権はメディアの区分から「通信」というカテゴリーを廃する措置をとった。これまでホワイトハウスの記者会見などでもメディアは新聞、テレビ、通信という三つに区分されていた。その「通信」の代表がAPだった。だがトランプ政権のカロライン・レビット報道官は「メディアは多様化しており、従来の区分はあまりに旧態であり、新たなネットメディアなどへの対応にそぐわない」と言明した。

ちなみにレビット氏は27歳の女性で、年来の大統領首席報道官のなかでは最年少である。だが第一期のトランプ政権での報道業務、さらには大統領選挙戦中のトランプ陣営での報道担当の首席という経験を経て、ホワイトハウスでの連日の記者団への対応はきわめて効率よくみえる。

記者団からの批判的な質問にも打てば響くような円滑さで答えていく。その間、メモをみることも少なく、自分の言葉で簡潔明瞭に答えていくのだ。しかもその回答の内容は当然ながらトランプ大統領の意向を直線的に反映し、保守主義尊重、リベラリズム排除の基本に沿っている。

そのレビット報道官は3月にはホワイトハウスの記者会見室(ブリーフィング・ルーム)の座席指定を変えるという方針を発表した。この座席指定は実はメディア側、記者側が一方的に決めてきた。