こういった手法には既視感がある。そう。「追い出し部屋」だ。2010年代に問題視されたリストラ手法である。関西大学の伊藤健市教授は追い出し部屋を以下のように定義する。
社内に設置された特定の「部屋」にリストラ対象社員を集め,仕事を与えなかったり,与えたとしても単純作業であったり,自身の就職先を社内外で探す仕事であったりして,希望退職への応募を繰り返し求めつつ,最終的に自主退職や転職を迫るもの
「追い出し部屋」が教えてくれること/伊藤健市/関西大学商学論集 第61巻第4号(2017年3月)
ジョブ型人事が、2010年代の「追い出し部屋」、あるいは1970年代の「窓際族」に続く、リストラ代替策になってはいまいか。
オリンパスでは、「人」にかかわる不祥事が頻発している。07年の内部通報した従業員に対する不当配置転換。11年の自社粉飾決算を追求したCEOの解任(11年当時CEO マイケル・ウッドフォード氏)。そして、昨年、有罪判決が下されたCEOの薬物使用(24年当時CEO シュテファン・カウフマン氏)。枚挙に暇がない。
11年の粉飾決算を調査した第三者委員会は「経営中心部分が腐っている」と断じた。あれから約14年。その企業風土の片鱗が、いまだ残っているとしたら、若く優秀な人材がオリンパスに留まることはない。グローバルに人材を採用できるジョブ型は、優れた人材が流出しやすい制度でもあるからだ。
この先問われるのは、オリンパスの企業風土である。

バーチャルツアーオリンパスミュージアムより
【参考】
『「追い出し部屋」が教えてくれること』伊藤健市/関西大学商学論集 第61巻第4号(2017年3月) 『ジョブ型雇用社会とは何か』濱口 桂一郎/著 岩波新書 『日本的ジョブ型雇用』湯元 健治/編著 パーソル総合研究所/編著 日経BP日本経済新聞出版本部