問題は、同社人事部の以下の弁だ。

「新しい制度(ジョブ型)となった為、今までの能力、キャリアは関係無く、新たに『配置転換を行った』。ジョブ型になったので、あくまで配置された職務の等級になっただけ」

オリンパス子会社「ジョブ型」雇用導入で200人が大量降格――訴訟提起や自殺未遂も | 週刊エコノミスト Online

ここでも、はて? と首をひねるはず。「配置転換を行った」とある。だが、ジョブ型は、従業員が合意しない限り「配置転換」はできない。ジョブ型とは、その名の通り「ジョブ」すなわち職務を特定して人を採用する人事制度だからだ。

同記事の以下の記述は、さらに問題である。

新設された部署はA氏も含めて配属はわずか2人で、「業務や職務内容、評価基準も未定」だった。

「はて?」。これで3度目だ。繰り返そう。ジョブ型とは、その名の通り「ジョブ」を明確に規定する人事制度である。「業務や職務内容」(ジョブ)が定まっていない部署に配置するこの人事制度は、もはやジョブ型の体をなしていない。

にもかかわらず、オリンパスのジョブ型は、24年の「ジョブ型人事指針(内閣官房・経済産業省・厚生労働省)」の導入事例に選定され、岸田首相(当時)から感謝状まで授与されている。

どうやら日本では、ジョブ型「変異種」が産まれているらしい。では、本来のジョブ型(=野生種)とはどのようなものだったのか。整理してみよう。

ジョブ型の「野生種」