一方で、国内では記録的な猛暑や減反政策の影響によりコメの供給が逼迫し、価格が高騰している。​このような状況下での輸出拡大は、国内供給の安定性に懸念を生じさせている。​政府は、コメの不足感が強まった際には輸出分の一部を国内に回す方針を示してはいるが、輸出契約の柔軟な調整が可能かどうかには疑問の声も出ている。

また、輸出向けのコメ生産には補助金が支給されており、これが国内向けの生産を圧迫しているとの指摘もある。

このように、政府の輸出政策が現在のコメ不足と価格高騰に影響を与えている可能性は否定できない。​今後は、国内の食料安全保障と輸出戦略のバランスを慎重に検討する必要がある。

9. MSAの構造的影響はいまも続く

MSA協定は形式的にはすでに終了しているが、戦後に植え付けられた「アメリカ依存型農政」はいまも根強く残っている。

小麦・油・トウモロコシなどの輸入依存 自給よりも貿易優先の食料政策 グローバル企業や外資の意向を忖度する農政

これらは、戦後の占領期から始まった構造の延長線上にあるとも言える。

10. では、私たちはどうすればいいのか?

国産米を食べて農家を支える 家庭でもご飯中心の食事に回帰する 政府には、備蓄の戦略的活用や農家支援の強化を求める 教育や給食でも、米文化の再認識を進める

そしてなにより、「安ければいい」「輸入すればいい」という発想から脱却し、 自分たちの食を、自分たちの手で守る意思を取り戻すことが必要である。

11. おわりに:MSAと食管法の“その先”へ

今回のコメ不足は、天候や需給の問題にとどまらない。

アメリカ主導の構造(MSA) 官製農業と価格統制(食管法) 減反政策という矛盾の上塗り 中途半端な自由化と農業軽視

これらが積み重なった結果として、いま私たちは「お米が足りない」という事態を目の当たりにしている。

日本の農と食を持続可能にしていくには、農政の見直しとともに、国民一人ひとりが「お米を選ぶ」という小さな選択を積み重ねることが不可欠である。「ごはん、おいしいね」と心から言える未来を、いま私たちの手で取り戻していかねばならない。