就活にたとえれば、基礎的な健康や運動能力のテストと言えます。

膣内(応募受付)をくぐった大量の“応募者”のうち、基本条件をクリアする精子だけがここでふるい落とされずに通過できるのです。

実際、子宮の奥へ到達できる精子は最初の数億匹中ほんのわずか。

就職活動のES選考と同じように、ものすごく狭き門だというわけですね。

こうして体力テストを通過した精子たちだけが、次なる“面接会場”ともいえる子宮へと向かうことになります。

三次試験:適性検査

三次試験:適性検査
三次試験:適性検査 / Credit:Canva

子宮頸管を突破して子宮の広々とした空間に入った精子たちも、まだまだ気は抜けません。

なぜなら、次は女性の免疫システムが待ち受けているからです。

私たちの体は、基本的に「外から侵入してきたもの」を排除するよう設計されています。

精子も例外ではなく、子宮内に入った時点で白血球などの免疫細胞から攻撃を受け、多くがここで脱落してしまうのです。

さらに、左右2本ある卵管のうち“正解”の卵管へ向かわないと、そもそも卵子に出会えない可能性もあります。

たとえば右側の卵管に卵子がいないときにそちらへ突き進んでしまえば、いわば「不採用」になってしまうわけです。

とはいえ、子宮はただ厳しいだけの環境というわけでもありません。

女性がオーガズムに達すると子宮が収縮し、精子をぐっと卵管へ押し上げるように手助けしてくれることもあるのです。

つまり子宮は、不必要な精子を淘汰しつつ、有望な精子には先に進む手助けもしているのです。

その証拠に、マウスの実験では子宮内で精子を殺す物質が作用し、特定のタンパク質でコーティングされた精子だけが生き残って卵管へ到達できることが報告されています。

このようにオス由来の精液成分が精子を防御し、メス由来の攻撃をかわすことで子宮内での競争的選抜が行われているのです。

この子宮内での関門は、さしずめ就活の適性検査に相当すると言えるでしょう。