具体的には、調整後のハザード比は0.76となり、粗解析ほどの差ではないものの、それでも「既婚者よりも24%ほどリスクが低い」状態が有意に認められました。

(※やや計算がややこしいですがハザード比を基に計算すると既婚者の認知症リスクは+32%、未婚者-24%と表せるイメージです)

また離婚経験者は既婚者に比べて認知症リスクが約34%低く、配偶者と死別した人も既婚者に比べて約27%低い値でした。

ただし、配偶者と死別した人については他の要因を調整すると差が小さくなり、統計的に有意な違いは見られなくなりました。

なお、この傾向は認知症のタイプによってもほぼ共通しており、アルツハイマー病やレビー小体型認知症でも未婚・離別・死別の各グループのリスクは既婚グループより低く報告されました。

ただし、血管性認知症では婚姻状況による差が見られず、さらに結婚していないグループの方が軽度認知障害(MCI)から認知症へ進行しにくいという結果も得られています。

以上の結果から、少なくともこの大規模データでは「結婚している高齢者の方が、結婚していない高齢者よりも認知症になりやすい」という、従来の予想とは逆の関連性が示されたのです。

結婚=健康に待った!

 

結婚=健康に待った!
結婚=健康に待った! / Credit:Canva

なぜこのような一見逆説的な結果が得られたのでしょうか?

研究チームは論文の中でいくつかの仮説を述べています。

一つは、至極単純な理由で「診断のタイミングの違い」です。

結婚している人は日常的に配偶者と生活を共にするため、物忘れなど認知症の初期症状が現れた場合に周囲(配偶者)がいち早く気付き、医療機関で診断されやすい可能性があります。

もう一つは、「結婚していない人ならではの生活上の強み」です。

パートナーがいない分、独身の人は友人や地域社会との交流を積極的に維持したり、趣味や社会活動に参加したりする傾向があるかもしれません。