このように見解が分かれており、結婚歴と認知症リスクの関係はまだはっきりしていません。
また、近年は生涯未婚や離婚、死別などで「結婚していない」高齢者が増えているため、彼らが本当に認知症になりやすいのかどうかを改めて検証することが社会的にも重要です。
そこでアメリカ・フロリダ州立大学の研究チームは、「結婚歴の違いが高齢者の認知症発症リスクにどのように影響するか」を大規模データで詳しく調査しました。
生涯未婚に比べて認知症リスクが約40%増という衝撃の結果

この研究では、米国の全米アルツハイマー病調整センター(National Alzheimer’s Coordinating Center, NACC)のデータベースを用いました。
NACCは全米の医療機関から集まった高齢者5万人以上を毎年追跡し、認知症の有無を評価している大規模な研究データです。
研究チームはその中から平均年齢71.8歳の高齢者24,107人を抽出し、ベースライン時点での婚姻状況によって「現在結婚している(既婚)」「配偶者と死別している(死別)」「離婚している(離別)」「一度も結婚したことがない(生涯未婚)」の4つのグループに分類しました。
そして、認知症ではない状態からスタートしたこれらの人々が、その後最大18年間の追跡期間中にどの程度認知症と診断されたかを比較しました。
今回の解析で特に目を引いたのは、生涯未婚の参加者でした。
まず、年齢と性別だけを補正した「粗解析」によると、生涯未婚者の認知症発症リスクのハザード比は0.60と推定されました。
これは同じ年齢・性別条件のもとで比較すると、「既婚者のほうが未婚者より最大で約67%も高い認知症リスクを持つ」という関係が観察されたということです。
さらに、教育歴や遺伝的背景、生活習慣など、多くの要因を同時に考慮する「多変量モデル」に切り替えても、やはり生涯未婚者のリスクは既婚者よりも24%ほどリスクが低い状態が有意に認められました。