スコア分布を覗いてみると平均は24.8点。
これは“やや時間不足”を意味しますが、問題はその内訳です。
グラフを重ね合わせると、睡眠が1日7時間を下回った瞬間にスコアが急上昇、余暇が3時間を切るとさらに跳ね上がり、まるで車のタコメーターが赤ゾーンに突入するようなカーブを描きました。
反対に、労働時間や通勤時間とはほぼ無関係という意外な結果も見えました。
つまり「長く働いているから時間貧困になる」のではなく、「貴重な裁量時間が削られている」ときに私たちは強い“時間赤字”を訴えるのです。
さらにスコアを、心と体の指標と組み合わせてみました。
するとこの主観的時間貧困尺度が1点高くなるごとに、主観的幸福感はストンと落ち(相関係数 r = −0.22)、心理的ストレスはじわりと上昇(r = 0.18)、孤独感はより強くなり(r = 0.30)、仕事への満足度も目減りしていくという“4連リンク”がほぼ直線で並びました。
研究者の比喩を借りれば、「忙しさで削られるのは時計の針ではなく、私たちの幸福感だった」というわけです。
最後に、育児というファクターも見逃せません。
子どもと向き合う時間が長い親ほどPTPSが高くなる傾向がはっきり現れました。
ケア労働が重なると、自分の裁量時間は真っ先に切り詰められる──家族を支える手は温かくても、その陰で“自分の時間口座”は冷え込むという、働く世帯ならではのリアルが浮き彫りになったのです。
まとめると、このPTPSは「6つの質問×1分未満の回答」で、睡眠・余暇・幸福感・孤立感・仕事満足度まで同時に透視できる“時間貧困のMRI撮影装置”のような働きを示しました。
時間赤字は幸福赤字

数字が出そろったところで改めて見えてくるのは、「時間がない」という感覚は単なるぼやきではなく、幸福感を根こそぎ奪う“見えない貧困”だという事実です。