授業料・塾代・大学進学費用の値札は年々つり上がり、家計に余裕のない子どもたちはスタートラインにすら立てないまま社会に放り出されています。
高い大学進学率に比べて、日本の研究の質は長期的な下落傾向にあるのも見逃せません。
なによりこの問題については、改善の兆しが見えないことが最大の問題です。
第三の健康貧困も進行中です。
長寿国という称号の背後では、低所得層ほど自己評価健康度が低く、慢性疾患を抱えたまま仕事も休めず医療にもかかれない「静かな病人」が膨れ上がっています。
医療費の自己負担、介護の担い手不足、そして生活習慣病を誘発する安価な加工食品――すべてが健康格差を押し広げる燃料になっています。
極めつけが今回のテーマになる第四の貧困、時間貧困です。
長時間労働と家事・育児のワンオペが合わさり、睡眠と余暇は“真っ先に削るコスト”に転落しました。
日本語版PTPSで測れば、裁量時間が枯れた瞬間に幸福感は奈落へ落ち、ストレスと孤独感が急上昇し、仕事のモチベーションさえ蒸発することがはっきり数値に表れます。
これは単なる忙しさではなく、“時間という通貨”の慢性的な赤字です。
1日は確かに24時間ありますが、使い道を制限されたあとの“自由時間”は、給料日前の財布のように底が透けて見えます。
この「使える時間の薄さ」は、1970年代に経済学者クレア・ヴィッカリーが“the time‑poor”と名付けて以来、所得・教育・健康と並ぶ“第4の貧困”として世界の研究者が注目してきました。
最近では睡眠不足、メンタル不調、肥満までも引き寄せる“負の両替商”だとも言われています(参考:Miura et al., 2025)。
とりわけ日本は、世界有数の長時間労働文化と共働き世帯の急増というダブルパンチに加え、家事・育児といった「無償ケア労働」が女性や特定の家族に偏りやすい現実を抱えています。
その結果、「やることは山積みなのに自分のための時間がない」という主観的な“時間の赤字”――いわば“見えない貧困”が、都会の高層マンションから郊外のベッドタウンまで静かに広がっています。