さらにオランダ司法当局のデータベースと照合し、期間内に公式な犯罪歴が付いたかどうかを確認しました。

解析の結果、最も大きな保護効果を示したのは親の社会経済的地位で、高い社会経済的地位に属する若者は低い社会経済的地位に比べ、将来公的な犯罪記録が残る割合がおよそ半分以下でした。

この抑制効果は、エゴ中心性・冷酷さ・反社会性のどの因子が高くても一貫して確認されました。

次に強かったのが親のモニタリングで、親が日常的に「どこにいるの」「いつ帰るの」と気に掛ける家庭の子どもは、サイコパス得点が高くても犯罪歴が付く確率が約30〜40%低下しました。

反対に、片親世帯や虐待・家庭内暴力など逆境的幼少期体験を抱える若者では、特にエゴ中心性や冷酷さが高い場合に犯罪へ至る危険が約2倍に跳ね上がりました。

興味深いことに、衝動や短気を反映する反社会性の因子は、過去の自己申告による非行を統計的に差し引くと、将来の犯罪をほとんど追加的に説明しませんでした。

また、親子関係の温かさや近隣の治安といった指標は、サイコパス特性と犯罪を結び付ける強さを有意には変化させませんでした。

要するに、同じ程度のサイコパス傾向をもつ若者でも、世帯の経済力と親の日常的な見守りが十分にあると犯罪に関わるリスクは大きく下がり、逆に親の不在や幼少期の逆境が重なるとリスクは大きく跳ね上がることが、7年にわたる追跡で明確になりました。

サイコパスを生かせる職業とは?

サイコパスを生かせる職業とは?
サイコパスを生かせる職業とは? / Credit:Canva

今回の追跡調査は、「サイコパス=生まれつきの犯罪者」という思い込みに強いブレーキをかけました。

冷酷さや自己中心性が高くても、家庭に十分な経済的余裕があり、親が日常的に子どもの行動を把握していれば、将来犯罪に手を染める確率はぐっと下がることが数字ではっきり示されたからです。

裕福さは学費や習い事の機会を提供し、目先の違法行為に頼らなくても達成感や報酬を得られる進路を開きます。