フェーズ1は、①風車、②浮体製造・設置、③電気システム、④メンテナンスについて要素技術開発を加速化する。フェーズ2は、風車、浮体、電気システム、係留等の挙動・性能・施工性・コストを考慮した一体設計技術を確立し、浮体式洋上風力発電を国際競争力がある価格での商用化に繋げる予定である。なお、フェーズ2では、発電事業者主導でコンソーシアムを組織するとし、30年には着床式洋上風力の発電コストは8~9円/kWhに設定しているが、本当に現実的に可能であるのだろうか。
(3)風力発電の技術・設備導入における中国リスクへの対応洋上風力発電計画における最大の課題は日本国内に大型風車メーカが存在しないということである。日本の風車メーカは中国製品とのコスト競争力が劣るため風車の設計・開発・製造から撤退した。
23年9月に国内初の民間資金による一般海域の着床式洋上風力発電が富山県入善町沖で運転を開始した。ここでは中国製風車(出力3MW級)3基で最大出力約7500kW、FIT買取り価格は36円/kWhである。
事業としてEPC(設計、調達、施工)サービスは清水建設が行い、同社が建造したSEP船(自己昇降式作業台船)を使用して基礎、台車を設置したが、運転・保守サービスは中国風車メーカの明陽智能(ミンヤン)が担当する。世界の風車ビジネスでは欧州メーカが先行したが、今や中国は世界全体の風力発電設備の製造能力の6~7割を占める。
中国の安売り攻勢に対し、EUは制裁関税で中国からの「デフレ輸出」を防ごうとしている(東京新聞、24年6月20日)。
日本の対応が待たれる課題である。
提言
上記の課題と展望を踏まえ洋上風力発電に関し以下提言する。
国は、我が国の洋上風力発電の真の実力を可及的速やかに見極め、導入政策の妥当性を検証し、結果を公表されたい。 合理的な事業運営の目途が立たないと判断される場合は、40年における最大4500万キロワットの導入計画を直ちに見直す事を検討すべきである。不足する発電容量の確保に当たっては最先端低炭素火力発電や中長期的には原子力の活用を考えるべきである。併せて洋上風力発電とリンクした新規送電網計画(7兆円構想)も適切に見直す事が肝要である。
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