少子化も含めた「少子化する高齢社会」に適応する社会システムを、いつまでにどのように創造するかというような「社会的関心」は芽生えてこなかった。「将来」を見据えないから、そのために何を優先して、何を我慢するかという処方箋につながる議論も無きに等しかった。その結果が21世紀の「縮減社会」(shrinking society)の誕生につながった。

『高齢化の社会設計』は私なりの高齢社会処方箋

ただ本書の題名とした「高齢化の社会設計」はSocial Design for Aging Societyのイメージであったから、可能な限りそれにふさわしい内容になるように努力した。その道具箱が「社会指標」や「生活の質」(QOL)研究であり、これらの成果を本書で初めて応用した。

その後も40年近くこの研究テーマにはこだわってきたが、「どうしたらいいか」という問題意識に照らして現状の把握を「社会指標」で行ない、そこから目標達成のための優先項目を具体化するためであった。

『現代社会学』での「社会指標」の特集

当時、国連やOECDなどの国際機関もこの開発に熱心であったことで、日本の社会学界でも数名の若手研究者が取り上げ始めていた。そして、学会誌『社会学評論』に不満を持たれていた数名の先生方が、1974年に新しく創刊されたのが現代社会学会議編『現代社会学』であり、年2回の刊行が始まっていた。

時代の要請でもあろうが、1978年にこの雑誌は「社会指標」を特集したのである。その特集号の責任者である富永健一(東大助教授)は、「現在望みうるかぎり最も高い水準において、それが実現されるはこびになった」と書いた。

しかも社会指標という主題の魅力が、「社会学における『思想』(デンケンすること)と『道具箱』(調査したり計算したりすること)との結合、また『理論』(観念の成果)と『実践』(社会生活の改善のための努力)との結合の実現に向いている事実のうちにある」とものべている。

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