そこで今回、研究者たちは次の3つのポイントに注目しました。

  • 性的な画像は本当に人の注意を妨げるのか?(SCID効果=Sexual Content Induced Delay)
  • その効果は男性の方が強いのか?
  • 男性は特に異性(女性画像)に引きつけられるのか?女性はどうか?

「男性はエッチなものに弱い」という俗説を、真面目に科学的に検証しようとしたわけです。

実験はとてもシンプルです。

画面の中央に、セクシーな画像か、普通の画像がパッと表示されます。同時にその画像の左右に傾いた2本の線(「/」あるいは「\」)が出てくるので、「線の向きが同じか違うか」を素早く判断してボタンを押してもらう。ただそれだけです。

中央に表示される画像は、性交渉シーン、ヌードの男性・女性といった性的に強い刺激を含むものと、日常風景や無機物といった非性的な刺激の2種類が用意されています。

重要なのは、「中央の画像は無関係」であり、見る必要はないという点です。

実験課題の流れ
実験課題の流れ / Credit:Snowden, R.J., Midgley, P., & Gray, N.S. ,Sexes(2024).

線の傾きが同じかどうかなんてことは、上の資料を見てもすぐ判断できます。

しかし一瞬でも中央のエッチな画像に目が行ってしまうとその判断が遅れます。つまり、どれだけ無視しようとしても「つい目を奪われるか?」がこの仕組みで測れるというわけです。

実験は大学に所属する18〜31歳の若年成人を対象に、2回行いました。

まず実験1では、43名(男性21名、女性22名)が参加して上の実験が行われました。

その結果は次のようなものでした。

  • 性的な画像が出ると、男女ともに判断が遅くなった
  • 特に男性は、女性画像に強く引きつけられた
  • 女性は男性画像・女性画像に対して、ほぼ同程度に注意を奪われた

つまり、男性は「異性の性的刺激」に特に敏感で、女性は「性的な刺激全般」に対してまんべんなく反応する傾向があったのです。