近親交配が深刻化しているのに、彼らはどうしてこんなに絶好調なのでしょうか?
有害な遺伝子を一掃する「浄化」が起こっていた!
研究チームはその秘密を探るべく、特に近親交配の進んでいるスヴァールバルトナカイの群れ91頭を対象に、遺伝子調査を行いました。
その結果、これらのトナカイは過去に、有害な遺伝子をコロニーから一掃させる「遺伝子の浄化(Genetic Purging)」を起こしていたことが分かったのです。
これは一体どういうことでしょうか?

近親交配が高度に進んだコロニーでは、両親から有害な遺伝子を受け継ぐ可能性が高まり、それが顕性遺伝子として表に現れやすくなるのでした。
こうした有害な遺伝子は、先天性疾患や健康状態の悪化として発現します。まさにカルロス2世のように。
すると、これらの個体は遺伝的な適応度が低下するせいで、繁殖の機会を得る前に死亡するか、繁殖しても子孫の数が少なくなるのです。
何とか生まれた子孫も同じように遺伝的適応度が低いため、繁殖する前にどんどん数が減っていきます。
一見すると個体数が減っているようですが、実はこのおかげで有害な遺伝子が子孫に受け継がれる確率も減少するのです。
これを「遺伝子の浄化(Genetic Purging)」と呼びます。
浄化が起こる前は個体数の激減が見られますが、表面的には種のピンチに見えて、本当は危険な遺伝子を取り除いている過程でもあるのです。
スヴァールバルトナカイも19C後半〜20C初めに一度、絶滅寸前に追い込まれていますが、その後に急速に数を増やしました。
同じ現象はニュージーランドに生息する「カカポ(学名:Strigops habroptilus)」でも確認されています。
