カルロス2世もアゴが大きすぎて咀嚼がうまくできず、いつも涎を垂らしていて、まともに話すことすら困難だったといいます。
さらに30歳になる頃にはすでに老人のように衰え、35歳までに髪がすべて抜け落ちたという。
結局、カルロス2世はハプスブルク家最後のスペイン国王となり、一族も徐々に衰退していくことになります。
このように近親交配は、種を存続させる上では明らかに得策ではありません。
しかし、近親交配でも種の繁栄は可能であることを証明するトナカイがノルウェーにいたのです。
7000年間、孤島で近親交配を続けたトナカイの一族
舞台は北極圏にあるノルウェー領の群島として知られるスヴァールバル諸島です。

この極寒の地には、島の固有種として「スヴァールバルトナカイ」というトナカイの一種が生息しています。
最初のトナカイは約7000〜8000年前にロシアの島々を経由して、スヴァールバル諸島に入ってきました。
それ以来、他種のトナカイとは完全に隔離された状態にあり、7000年以上の期間を近親交配を繰り返しながら島で生き続けています。
研究主任でノルウェー科学技術大学のニコラス・ダセックス(Nicolas Dussex)氏は「すべてのトナカイの種の中で、スヴァールバルトナカイは最も近親交配が進んでおり、遺伝的多様性が最も低いことが分かっている」と話します。
にもかかわらず、本種の個体数はここ数十年で急速に増え続けており、現在では約2万2000頭を突破するまでになっているのです。

さらに、寒さの厳しいスヴァールバル諸島への適応にも成功しています。
例えば、他種のトナカイに比べて短足になっているのですが、これは体熱が逃げるのを抑える効果があると考えられます。
またトナカイの主食である地衣類の他に、さまざまな植物を消化する能力があったり、同島の極端は季節変化に合わせて体内時計を調節する能力も身につけています。