イメージとしては、違う国の地図を全部まとめて、どこに山があり、どこに街があるのかを一本化した“世界地図”を用意するような感じです。

すると、新しく測定したマウスが登場しても、その“世界地図”をベースにして少しだけ微調整すれば、たちまち「このマウスの視覚野はこんなふうに動くのか」と予測できるようになるわけです。

しかも、このモデルがすごいのは、自然界のリアルな映像だけでなく、模様や点々が動くだけのような“特殊な映像”に対しても、実際のマウス脳が見せる反応をかなり近い形で再現できる点です。

たとえば「山や川がちゃんと描かれた詳しい地図」を持っていると、街の配置だけを簡略化した地図でも大体の位置関係を推測できる――そんな想像をしていただくとわかりやすいかもしれません。

さらに、もうひとつの面白い発見は、こうして作られた“マウスの電子脳”が、実際のマウスの脳細胞の構造と見事にリンクしていたことです。

要するに、“脳活動”をバーチャルに再現するだけにとどまらず、その元になっている細胞の形やつながり方とも対応がとれている。

これは、「視覚処理の仕組みをほぼそっくり仮想空間に移植した」とでも言いたくなるような未来を感じさせる結果です。

この成果がなぜ画期的かというと、大ざっぱに言えば「動物実験でごそっと集めたデータをまとめてしまえば、新しく測ったマウスにも手早く応用できる」というところにあります。

まるで共有の“ベースマップ”を作るようにしておけば、あちこちのマウスでいちいちゼロから地図を作り直す必要がなくなるのです。

これによって膨大な時間や手間を省きながら、多種多様な“脳の動き方”を一気に予測できるようになるわけです。

そしてもし、この“電子脳”がさらに進化すれば、研究者はコンピュータの中で好きなだけ実験を試し、うまくいきそうなものだけを実際のマウスで検証するといったスピーディーな研究手法が可能になるかもしれません。